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旅の発見スペシャルコンテンツ

芭蕉の金字塔に秘められた暗号を解読|森村誠一、謎の“奥の細道”をたどる①

ミステリー界の巨匠・森村誠一が、「おくのほそ道」に挑戦!俳文学史に燦然と輝く傑作には、数々のナゾが隠されていた…松尾芭蕉が行脚した道程をたどり、新たな視点で読み解く東京・深川を起点に、深き奥州・北陸の地へ時空を超え、日本再発見の旅路が、いま始まるスペシャル版として旅への熱い思いをお届けします。

Special Message from Seiichi Morimura

私にとって、理想の旅の実践者は、ヘルマン・ヘッセなんです。彼は、南ドイツに生まれ、スイスやイタリアに移り住み、インドを訪ね、常に旅に生きた人でした。詩人に憧れていた若き日のヘッセは、恐らく無目的で各地を巡り、詩を書き水彩画を描いた。もちろん、創作活動として行くから、まったく目的が無いわけじゃないけど、思索に耽りながら、自然と湧き起こる気持ちを作品へ結実させたに違いない。ところが現代人の旅は、常に目的があり、ともすれば途中の過程は、単に移動の時間にしかすぎない風潮があります。旅というよりビジネスの出張に近い感じ。通勤や引っ越しも同じですよね。


季節を写しとり、ゆかりの地を訪ねる(上・清澄庭園にて 下・芭蕉稲荷神社)

旅の原点は、日常性からの脱却にあります。それは目的を持たないからこそ叶うのだと思います。体に打ち込まれた楔から解き放たれることが、旅の神髄なのです。 芭蕉の「おくのほそ道」も、句作の旅ではあるのだけど、無事戻れるかどうか判らない覚悟の出立で、様々な道中見聞の中、体の奥底からの昂りを感じた時、句を詠んだと思うのです。ヘッセと芭蕉、2人は僕が最も敬愛する旅人なのです。今回、芭蕉の巡った行程をなぞりながら各地を取材し、写真俳句や旅行記、何れは小説のモチーフとして、生かせればと考えています。おくのほそ道という敷かれたレールの上を走りつつも、新しい発見がたくさんあるはずなので、私自身期待に胸を躍らせています。



芭蕉の足跡を自ら歩き、往時をしのぶ(上・出羽街道中仙越 中・中尊寺金色堂 下・中尊寺本堂)

おくのほそ道での芭蕉の句は名句ばかりですが、私の提唱する写真俳句は、句と写真がワンセットになって完成するので、“凡句”と“凡写”の組合せが、面白い作品になるかもしれない。デジタルカメラという現代の利器とのジョイントによって、意外な深みを出せるかもしれないのです。芭蕉が詠んだ「夏草や兵どもが夢の跡」や「五月雨をあつめて早し最上川」、そして「荒海や佐渡に横たふ天の河」は、何れも空間と時間が合体し、五七五の文字数に集約され、比類なき芸術へと昇華しています。もしかしたら写真俳句には、芭蕉翁の傑作には及ばないまでも、新たな感性の表現として、無限の可能性が秘められているのではないかと思っています。私の“奥の細道”での新発見を、これから様々な形で発信していきます。作品に触れた方が、一時日常からタイムスリップして、旅の醍醐味を味わう一助になってくれればと願っています。

(構成/石井強詞)

取材・撮影/P.M.A.トライアングル

森村誠一、謎の“奥の細道”をたどる|第一の旅路「芭蕉出立の地、深川を訪ねる」は11月20日更新予定

森村誠一、謎の“奥の細道”をたどる
連続14回連載

Special Message from Seiichi Morimura

「芭蕉出立の地、深川を訪ねる」

「平泉から尿前の関へ─Part1」

「平泉から尿前の関へ─Part2」

「平泉から尿前の関へ─Part3」

「白河の関から那須、そして日光へ─Part1」

「白河の関から那須、そして日光へ─Part2」

「白河の関から那須、そして日光へ─Part3」

⑨ 「立石寺、最上川から日本海へ─Part1」
春更新予定

プロフィール

森村誠一

森村誠一(もりむら せいいち)

1933年埼玉県熊谷市生まれ。青山学院大学卒業後、10年間のホテルマン生活を経て作家活動に入る。『高層の死角』(第15回江戸川乱歩賞受賞)、『腐蝕の構造』(第26回日本推理作家協会賞受賞)、『人間の証明』(第3回角川小説賞受賞)『悪魔の飽食』『コールガール』など数多くのベストセラー作品を著し、本格派推理小説の世界で不動の地位を築く。作家活動40周年にあたる2003年には、第7回日本ミステリー文学大賞を受賞した。
近年は、新たな表現として“写真俳句”の創作、普及にも力を注いでいる。

http://www.morimuraseiichi.com/

http://www1.tategaki.jp/morimura/

http://shashin-haiku.jp/

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